【分析】IPOと埋没費用

 経済学・経営学・ファイナンスを勉強した方なら、ご存知の”埋没費用”。事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のことですが簡潔にいえば、どうやっても回収できない(取り戻せない)残念な費用。あらら・・・(^^;)

”新型コロナウイルスの治療薬として効果が期待される「アビガン」の無償供与を希望する国への発送は、大型連休後から43か国に始める”ことのようです。記事を読み、管理人としては希望的観測もありますが、副作用が少なくコロナ治療に効果があることを切望しています。
と同時に、アビガンの開発は30年も前からとのこと。途中で開発中止になっていたなら、日の目を見ることもなかっただろうし、新薬開発の莫大な費用も”埋没費用”になっていたんだろうな~!と考える次第です。まぁ、製薬会社の新薬開発は埋没費用になりがち(一発当てて大逆転みたい)なので、この業界では埋没費用という考え方は当てはまらないかもしれませんね。(^^;)

さて、コロナ→アビガン→埋没費用と連想しているうちに、2020年度の上場承認数・中止/延期・公募割れ・・・このへんのランキング作成とIPOの埋没費用について調べてみました。

上場承認・中止/延期・公募割れ集計

上場中止/延期と公募割れは同じ18社! 偶然で~す。(^^;)

上場予定(a)上場(b)中止(c)上場率(b/a)公募割れ(d)割れ率(d/b)
2月度3社3社0社100%0社0%
3月度28社24社4社85.7%17社70.8%
4月度15社1社14社6.7%1社100%
46社28社18社60.9%18社64.3%

壊滅的な2020年3~4月期は、IPO史に残ることでしょう!・・・ムムム(^^;)

IPO取扱・中止/延期・公募割れ 証券会社ランキング

主幹事ランキング中止/延期ランキング公募割れランキング
順位会社主幹事順位会社中止/延期順位会社公募割れ
1位野村15社1位SBI0社    0%1位SBI0社    0%
2位みずほ11社2位いちよし0社    0%2位いちよし0社    0%
3位大和7社3位三菱0社    0%3位日興3社   60%
4位日興6社3位岡三0社    0%4位大和2社   67%
5位SBI3社4位日興1社  17%5位みずほ5社   71%
6位いちよし2社5位みずほ4社  36%6位野村6社 100%
7位三菱1社6位大和4社  57%7位三菱1社 100%
7位岡三1社7位野村9社  60%7位岡三1社 100%
  46社  18社  18社

 順位付け
・主幹事  : 主幹事での取り扱い社数の多い順
・中止延期 : 中止/延期÷主幹事の比率が少ない順。同率は主幹事が多い方が上位
        野村證券は主幹事15社で9社が中止になりましたので、中止率は60%!
・公募割れ : 公募割れ÷上場数の比率の少ない順。同率は主幹事が多い方が上位
        野村・三菱・岡三は、上場したが”すべて公募割れ”。あらら・・・(^^;)

ランキング分析

 主幹事ランキングは、どうということはありません。統計的に総合証券が占めていて、今回もその通りです。
IPO愛好家としては公募割れも困りますが、上場されないと何もできません。ましてや申込終了後に中止/延期は止めていただきたいものです。まぁ、IPO愛好家は、多くが当選しても初値で売却してしまうので、企業側・証券側からは”長期に保有してくれない、企業を応援してくれない個人投資家”としか見られていないということなのでしょう。実際にその通りですけどね。・・・あはは(^^;)

 今回の集計はコロナで壊滅的な3~4月のIPOがメインですが、それでも中止にならず、かつ公募割れしなかったIPOを取り扱った証券会社は?・・・というIPOを愛する管理人の独断と偏見で作成したものです。証券各社への特別な偏見は・・・、ちょこっとあるかも?(^^;)
この点では、SBIはさすがですね。これまた統計的に、”小粒でも(公開株数は少なくても)ぴりりと光る(初値が高騰するテーマ性のある)”IPOの取り扱いが多いSBI証券は、IPO愛好家にとって素晴らしい証券会社に映ります。素晴らしくとも、SBIでの当選は・・・う~ん(^^;)なのですが・・・。
”いちよし”も良い順位ですが、2月上場2社と相場が崩れる前だったのは、運もありますね。

IPOビジネスは証券会社の収益の柱です。上場できて初めて手数料が稼げるわけです。その意味では、野村證券は9社分の手数料がなくなった。ビジネスが消滅したと考えてもいいでしょう。逆にいえば、上場数は少ないながらもSBI・いちよし・三菱・岡三は、予定通りビジネスが完結できたわけです。

IPO上場費用

 上場が中止/延期になりましたので、取り戻せない回収できない費用というか、いったい上場するのにいくらかかったのかを調べてみました。
おおまかに、上場準備・上場時・上場後に発生する費用があります。

上場準備費用

・コンサルティング会社への報酬
 IPOコンサルは、証券会社系コンサル会社・会計士系コンサル会社と大きく2つに分かれます。
 証券会社系コンサル会社は証券取引所の審査実務に精通し、審査に対応するための方法を的確に
 助言できる。会計士系コンサル会社は、内部統制や決算開示体制の整備に強いという特徴あり。
 料金の相場 : 年間600〜 1,500万円程度

内部統制の構築 J-SOXコンサル
 J-SOXコンサルとは、日本版SOX法による要請にこたえるために、内部統制を構築し財務報告の
 信頼を保つコンサルティングのこと。全社統制や業務処理統制、決算統制、IT統制といった角度
 から、会社の統制システムを見直します。それぞれの観点から、調査・計画・整備構築・教育運
 用・評価・是正という過程を踏んで改善を図っていくとのことです。
 内部統制にかかる費用 : 年間で平均1億6,000万円程度
 過去に上場中止/延期では、内部統制で問題が見つかった等の理由が散見されます。内部統制にお
 金をかけなかったということですか~? というより、内部統制以前に問題だらけだったと思い
 ますけどね。・・・ムムム(^^;) 

上場時費用

・上場審査料、新規上場料

費用東証一部東証二部マザーズJASDAQ
上場審査料400万円400万円200万円400万円
新規上場料1,500万円1,200万円100万円600万円

上場中止/延期なので、新規上場料の支払いはないと思いますが、上場再トライ時には再度審査を受けたら、え~!もう一度この料金を支払うのですか~!コロナ救済は!・・・ムムム(^^;)

上場後費用
上場しなかったので、支払っていないはず(^^;)

・証券会社・監査法人に支払う費用
 上場の際には、株式会社・監査法人に対して年間で5,000万円程度の費用を支払いが発生します。
 内訳は、監査費用800~2,000万円株式事務代行手数料400万円程度主幹事証券会社成功報酬
 500万円程度
コンサルティング費用400~800万円程度となっています。あくまで目安としてください。
上場中止/延期になると、証券会社ではこの手数料(収入)が消滅するわけですね。あらら・・・(^^;)

・証券代行機関に対する手数料
 会社の株券の名義書換事務を代行するのが、証券代行機関です。上場した場合は、この証券代行
 機関に対しても手数料を支払わなくてはなりません。 多くの場合、信託銀行や証券代行会社がこ
 れを行っています。
 料金の相場 : 1,000万円~8,000万円
 目論見書に、株主名簿管理人○○信託銀行という記載がありますが、なるほど、そういうことだ
 ったのですね。知りませんでした。今更ですが、勉強になりました。あはは・・・(^^;)

・年間上場料 維持費用ということでJPXへの支払いです。

上場時の時価総額東証一部東証二部マザーズJASDAQ
50億円以下96万円72万円48万円100万円

当然、時価総額が大きくなれば支払金額も多くなります

まだまだいろいろありますが、大きな支払いということで他は省略します。(^^;)

最後に

 今回、IPOと埋没費用ということで、上場中止/延期した会社がどれだけの費用をかけて上場しようとしたかをご理解いただいたかと存じます。
この埋没費用の考え方は、会社経営でとても重要になってきます。「もう○○○万円も使ってるんだから、後には引けない」と考える意思決定者(経営者など)は少なくありません。上場するということも心理的には同様に思えます。準備万端で承認申請まで来た。使った費用は回収できない。承認後、中止発表をすぐにはせず、できる限り上場の可能性を探りたい。う~ん(^^;)管理人には、この気持ちが、とてもよくわかります。

なぜかって、この埋没費用ですが、株式投資に置き換えると”損切り”ではないでしょうか! 回収できない、取り戻せない損失。損切りは、わかっていても難しいものです。それを考えると、中止/延期された会社へ「このやろ~!」なんて言えませんね。管理人は損切りが苦手なのです。
今回のブログで一番いいたかったことを最後の最後に書きました。・・・あはは(^^;)

では、また(^^)/~~

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
読者の皆様もコロナに感染しないよう細心の注意をお願いいたします。

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