【№1479】
えーっ!! IPOの引受業務って不採算業務なのですか?
管理人の妄想かもしれんが、じっくり解説するぞ!!
IPOは、証券会社が損をしないようにできている!!
IPOに伴って株式の公募を行う場合、新規上場(IPO)する会社は、主幹事証券会社をはじめとする複数の証券会社に、発行する株式を買い取ってもらうのが一般的です。これを株式の「引受」と言います。
株式の引受を依頼する際には、証券会社に対して引受手数料を支払う必要があり、引受手数料の目安は公募総額の5~9%程度です。ただし、これは公募価格(公開価格、または公募・売出価格)と発行価格が同じ場合のケースです。
「スプレッド方式」というものがあります。スプレッドとは、発行価格と引受価額の差のこと。発行価格と引受価額の差額の総額は、引受証券会社の手取金(証券会社の手数料に相当する金額)で、引受証券会社の役割に応じて各社に分配されます。新規上場スの場合、スプレッドは概ね8%。この場合は、会社が引受手数料を拠出する必要はありません。
さて、IPOの公開価格決定のタイミングで目論見書(訂正事項分)が発行され、発行価格と引受価格が記載されていますね。
直近のIPOを例にすると、先週の金曜日(7/29)に上場した”エアークローゼット”(9557)の発行価格は、800円。引受価格は、736円。スプレッドは、64円(8%)になりますので、引受証券各社の手数料は以下の通りです。
エアークローゼット 引受証券各社の手数料
引受証券会社 | 割当株数 | 手数料 |
みずほ証券 | 770,300 株 | 49,299,200 円 |
大和証券 | 43,400 株 | 2,777,600 円 |
SBI証券 | 17,300 株 | 1,107,200 円 |
三菱UFJモルガンスタンレー証券 | 8,600 株 | 550,400 円 |
いちよし証券 | 4,300 株 | 275,200 円 |
岩井コスモ証券 | 4,300 株 | 275,200 円 |
岡三証券 | 4,300 株 | 275,200 円 |
東海東京証券 | 4,300 株 | 275,200 円 |
松井証券 | 4,300 株 | 275,200 円 |
マネックス証券 | 4,300 株 | 275,200 円 |
楽天証券 | 4,300 株 | 275,200 円 |
計 | 869,700 株 | 55,660,800 円 |
※上記意外に、OA(130,400株)があります。
IPOの主幹事を務めるのは大変なことですが、80%以上も割当株数があるので、手数料も半端ないですね。逆に言えば、平幹事の手数料はしれていますが、引き受ける限り利ザヤは稼げます。f(^^;)
いちよし証券は、IPOから撤退!!
3月8日に、いちよし証券は「有価証券の引受け業務」を12月末をめどに取り止めることを発表しました。この「有価証券の引受け業務」とは、具体的にはIPO・POの引受業務を指します。※POの引受業務の取り止めは、未定。
いちよし証券によると取り止め理由は、「引受業務は、不採算業務であり、かつ当社の経営において相対的に重要性が低下してきた」とのことです。
ー 本当に不採算業務なんですか? -
前述の通り、IPOの引受業務は、証券会社が損をしないようにできています。平幹事の割当株数は少ないので手数料もしれています。いちよし証券は回数は多くありませんが、主幹事を務めます。本当に不採算業務なのでしょうか?
いちよし証券の「有価証券の引受け業務」の取り止めは、下記からジャンプします。
プレスリリース「当社の引受け業務に関するお知らせ」
いちよし証券 引受業務の収支は?
いちよし証券のIPO引受業務の収支を、同社の決算説明資料(受入・売出手数料)から抜粋してみました。なお、この「受入・売出手数料」の主な内訳は、IPOとPOの引受です。
いちよし証券
(単位:百万円) | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
営業収益 | 18,270 | 19,591 |
受入・売出手数料 | 496 | 591 |
比率 | 2.7% | 3.0% |
いちよし証券のIPO・PO引受(受入・引出手数料)は、約5億円・6億円しかありません。そして、収益に占める引受業務の割合は小さいですね。いちよし証券が、「当社の経営において相対的に重要性が低下してきた引受業務」というのが、よくわかります。
ー 収益に占める引受業務の割合 -
いちよし証券の「収益に占める引受業務の割合が小さい」ことはわかりましたが、そもそもIPOを取り扱う他の証券会社は、どれくらい手数料および割合なのでしょうか? 同じ中堅の総合証券会社の岩井コスモ証券・岡三証券・東海東京証券の決算説明資料を調べてみました。(^^)
岩井コスモ証券
(単位:百万円) | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
営業収益 | 22,993 | 20,708 |
受入・売出手数料 | 147 | 311 |
比率 | 0.6% | 1.5% |
岡三証券
(単位:百万円) | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
営業収益 | 67,259 | 73,778 |
受入・売出手数料 | 434 | 1,106 |
比率 | 0.6% | 1.5% |
東海東京証券
(単位:百万円) | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
営業収益 | 69,632 | 80,975 |
受入・売出手数料 | 1,076 | 1,333 |
比率 | 1.6% | 1.6% |
同じ中堅の総合証券会社でも、営業収益・受入引出手数料は異なりますが ・・・。あれれ ・・・ ? 決算説明資料の同じ「受入引出手数料」を抜粋したので間違いないはずですが、いちよし証券の収益に占める引受業務の割合は、岩井コスモ証券・岡三証券・東海東京証券の倍以上あります。
どうやら、いちよし証券の「収益に占める引受業務の割合が小さい」とは、同業他社と比べて小さいのではなく、そのままの「収益全体から見れば、占める引受業務の割合は小さい」という意味ですね。
いちよし証券・岩井コスモ証券・岡三証券・東海東京証券の中堅総合証券会社には店舗(店頭)があり、ネット証券以上の経費がかかっています。各証券会社は、業界内での生き残り競争の真っただ中です。いちよし証券のIPO引受業務の取り止めも、経営資源の効率化なのでしょう。
ならば、IPOの引受業務、つまりIPOのシンジケート団構成も、今後変わって行くのかもしれません。
いちIPO愛好家の管理人としては、抽選配分の少ない中堅総合証券会社にはIPO引受業務から退場していただき、抽選配分の多いネット証券の取扱・割当株数が増えていただきたいと思います。それでも、僅かな手数料にしがみつく証券会社が残るとは思いますが ・・・ 。f(^^;)
今回例に挙げた”エアークローゼット”の残りの平幹事に、松井証券・マネックス証券・楽天証券がいます。2022年度になって、松井証券の取り扱いが増えたと感じませんか。松井証券の決算説明資料(2022年3月期)には、以下のことが記載されています。
ー IPO引受の取組み -
IPO引受参入率
「21年度目標40%超を達成」
「22年度は50%を目指す!!」
大きな流れなので一朝一夕には変わりませんが、
次第にIPOの引受業務はネット証券にシフトしていくかも?
IPOの引受業務に限り、人手を介さない(店頭がない)ネット証券の方が
経営効率的には優位なのかもしれませんね。(^^)
では、また(^^)/
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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